東京の娼年の働き方④

東京の娼年のエース奥村君が「何もしない」労働だけをしていると聞けば、

そんなのずぼらなだけじゃないか。

と批判する大多数の凡人がいるだろう。そういう働き方があるということを認めることも信じることもできない人たちだ。

そういう人たちのために説明しておこう。これとは別に奥村君は、自分で事業を行っている。ターゲットとしている顧客層は、女医や女経営者をはじめとしたキャリア女性である。そのキャリア女性に奥村君は「彼にしか提供できない体験」を売っている。

それはどんなサービスか。

顧客のひとりである私の知己の言葉を引用すると、

「まるで全日本女子バレー代表に選ばれ、合宿しているような体験」

である。これでピンと来ないようだと、30分10万円で提供している彼のサービスの価値を理解するなど無理である。

キャリア女性は、性は女でも根はマッチョ体質である。厳しくされれば厳しくされるほど燃え、高揚して来るという性質を持っている。奥村君は彼女たちのそういう性質をピンポイントで突くサービスを自分で考えたのである。それは彼が毎日、大学ラグビー部でやっているのと同じようなムードの練習。荒々しい怒号に似た叱咤が飛び交う、ピリピリしたムードで、骨の髄まで疲労するレヴェルのトレーニングを提供している。その値段が30分10万円だ。顧客からすると「安すぎる」そうである。