精子取引。

東京の娼年は「金を有効に使いたがっている」富裕層への、男の子のデリバリーシステムである。私が後期研修を終え、精神科医として働き始めた頃に創業したのでもう6年になる。

これを始めた頃、未来の世界がコロナウィルスにより、こんな状況になるとは思いもしなかったが、巣ごもり消費を追い風にデリバリー系ビジネスは売上を伸ばし、ヒトのデリバリーである東京の娼年の売上も急増した。全く、未来というのは本当に予想がつかないものである。

精子を欲しがる富裕層が増えることはわかっていた。

他者と差をつけることが資本主義で勝つ戦略のひとつである以上、精子の時点から差をつけたいと考えるのは当然だろう。

ここら辺に関する法整備もズサンというか曖昧で、規制も曖昧である。もっとも曖昧にしておくことで、富裕層には自由にやっていただいて結構です、という意図があるのかもしれない。

医者の中にも積極的にプロトコルを創造している先生がいて、代理母を借りるという面倒な方法をとらず、精子提供者と自分の妻の性交渉を認めるという方法を採用し、方法そのものはエキセントリックだが、生物学的には自然な形で実行している。

精子提供者への報酬も規定がないぶんさまざまで、ここ数年で、億単位の報酬は珍しくなくなった。

東京の娼年システムの利益は、精子取引と後継者推薦の仲介料であり、男の子を紹介するのにいちいち手数料を取るといった面倒な真似はしていない。男の子は顧客から直で「車齢」としての報酬を貰うので、私は彼らが幾ら貰っているかの正確な数字を知らない。

東京の娼年システムを創った理由⑩

富裕層の「精子が欲しい」という需要が急騰することも予想がついていた。

彼らは既に「実の息子を生み、必要な教育を与え、成人させている」。巧く教育できたと高い自己評価を与えている。それだけに、少し時間が経つと「もう一度」という気になるのは、引退した芸能人やスポーツ選手がカムバックする理屈と通じるものがある。

彼らは「そういうライフスタイル」が好きで堪らないのである。

子育てに勝る快感は無いと山口パパは私に教えてくれた。そりゃそうだろう。山口君は同じ世代の男の子の中でもとびきり傑作である。彼の子育ての最中、山口パパは未来の我が子の活躍を予想できたであろうか。おそらく予想もしていなかったと思う。というのは、目の前にいる我が子を愛し抱きしめるのに勝る快感は無いと気付いてしまっていたからだ。

山口君ももう22歳、子供を設けてもおかしく無い年齢になった。最初の山口君の遺伝子を受け継いだ子供を育てるのは、一体誰なのだろうか。

私か。

子育ての成功者が買い取るのか、子育ての開拓者が手に入れるのか、非常に楽しみな瞬間がもうそこまで迫っている。

東京の娼年システムを創った理由⑧

奥村君の資本主義的才能は、人を巧く使う能力である。驚くことに奥村君の後輩は全員奥村君に何らかの忠誠を誓っている。精神科医の私からするとこれは極めて興味深いテーマである。コロナのせいで、奥村君とは山口君の時ほど直に会えていないが、それでもわかったことがある。奥村君は、人の「良いところをまず見つける」癖がついているのだ。そして人の「良いところを引き出し、それが長所と自覚させる」能力に長けている。だから皆奥村君を慕うようになるのだ。

選手に己の価値を自覚させ、それをグングン伸ばすよう、使いに使うというのは、コーチングの基本中の基本である。奥村君はそこに長けているのだ。おそらく就職する宣言でもすれば企業は放って置かないだろう。

「東京の娼年」は山口君、そして奥村君の登場でそれまで予想していなかった方向に進み始めている。

もちろん好ましいことである。チャレンジは常に好ましい。

東京の娼年についての私個人の基準は「健全な考え方や新しい働き方の規範になるような男」であるが、それももうちょっと古いのかもしれない。「変化の時代」と言われる実の意味は、口先だけでなく、この今瞬間ですら変化しているということである。このシステムを始め5年以上経つ今、5年前の私のこだわりもまた古い慣習なのかもしれない。

そういうことを体感するダイナミックなシステムが「東京の娼年」である。組織やシステムは常に変化し、いろんな形状に姿形を変えていく。昨日と全く同じということなどありえない。そういうことは自己啓発本には必ず書かれている。しかし人はなかなかそういうことを日々実感しながら生きるということをしない。

そういうことを体感するダイナミックな組織やシステムがあるとするなら、それは小舟で、いるのは大海原である時だ。総勢70人程度の組織など資本主義経済社会では小舟である。しかし小舟だけに、船員は、船酔いしないための平衡感覚を率先して磨かねばならないという意識になれるのだ。

東京の娼年システムを創った理由⑦

山口君の顧客をそのまま奥村君が譲り受け、だからトップに立っているなどという検討外れなことを考える馬鹿は東京の少年にはひとりもいないはずだが、念のために書いておくと、山口君の顧客はひとり残らず山口男寮の後輩6人が分担することとなり、ひとりも奥村君に譲られていない。奥村君は自力で顧客を獲得している数少ない男の子だ。もちろん私も彼に顧客を紹介していない。彼は自分で見つけて来ることができるのである。金持ち富裕層の顧客を。

ここが奥村君がトップを独走するいちばんの理由かもしれない。どんなに能力スキルのある男の子でも、顧客がいなければそれを生かすことも働かすこともできない。当然金も貰えない。実は富裕層に仕え仕事をするより、富裕層を見つけ関係を作ることの方が難しいのである。東京の娼年をやっている子は皆そこのところをよくわかっている。

しかし奥村君は出会い系を駆使して富裕層を巧みに「釣り上げている」。

というのは、いくら富裕層でも、奥村君のような体育会男子と知り合うツールは貧困層が使うツールとほぼ変わらないらしい。つまりは「体育会男子との出会い」については富裕層も苦労しているということである。奥村君はその状況を巧みに利用し、数少ない富裕層との出会いを確実にものにしている。

奥村君の才能は、これまた挙げ出したらキリがないのだが、経営者の私からすると、兵隊を動かすのが上手い能力だ。彼は自分の後輩を実に巧みに使い利益を上げさせウインウインしている。現在、奥村君が投入して来る東京の娼年は1年で6人に登る。山口男寮の後輩数と数的にはトントンだが、奥村君がデビューしてまだ一年しか経ってないことから考えると、これはものすごいペースである。

東京の娼年システムを創った理由⑥

2021年年明け、1月の集計で4年間トップを独走していた山口君がついに首位を明け渡した。その男の子が奥村君である。奥村君は、コロナライフが始まった昨年4月、唐突に学生寮が閉鎖となり行く場所がなくなったところを山口君に拾われたラッキーボーイである。これまで山口君は現役選手だったため「誰かの指導」をすることは一度もなかった。その山口君が寝食を共にすることで直に徹底的に教育しデビューさせた最初の男の子が奥村君である。

山口君は既に、東京の娼年として稼ぐプロトコルを自分なりに作り上げていた。その証明をするステージにシフトしたのである。彼は「1番はふたり要らない」という名台詞を残し潔く引退した。

山口君の戦略は見事である。

資本主義で成功するために必ず必要な要件をあなたは優先順位の高いものから順に10個今すぐ挙げられるだろうか。挙げられないようでは東京の娼年はおろか月100万円稼ぐのも無理である。

その必要な要件の1番が「専門性」である。もちろん学問に限らない。スポーツでも芸術でも、犬でも、なんでもいい。なんでもいいが相当深掘りした専門性がないと、大多数の人を尻目に億という数字を稼ぐのは難しい。山口君の専門は「アダルト」中でも超専門は「センズリ」である。センズリ研究については世界一だと自己紹介できると言い切る。何しろ彼は世界で初めて、手を使わずに射精するデバイス開発に成功した男である。

山口君が奥村君に会った時、奥村君はあることに夢中だった。そのあることとは、「男のパパ活」である。山口君はそれを聞いて奥村君に興味を持ったという。というのは、そういうことをしでかす男は男100人いてもひとり、いや1000人にひとりかもしれないと思ったからだ。奥村君もまた山口君同様、「男のパパ活」というキテレツな専門性を持っていた。男のパパ活については日本一と言っているかどうかは知らないが。

つまり、奥村君は登場した時既に、自分の専門性を掘りまくっていた、そういう時期に幸運にも資本主義を熟知する山口君と出逢ったというわけだ。類は友を呼ぶ。類友の法則はここでも効いている。

東京の娼年システムを創った理由⑤

しばしば例に出す山口君の当時の収入は不明である。彼は娼年業以外にも自分で興したアダルトムービー制作会社からの利益が莫大で、コロナライフがスタートし巣篭もり消費が始まった去年の3月、過去最高益をマーク、以来、ずっと最高益を更新し続けているという。その3月の月の利益が8000万だったというから、彼はおそらく自分の会社だけで年間10億円くらいの利益をあげているだろうと思われる。

そもそもコロナパンデミックによる社会不安が蔓延すると、人は生存欲求からセックスやオナニーをやりたくなるものなのだが、今回セックスはご法度なので、皆、オナニー(男はセンズリ)にシフトしたのだ。そうすると「おかず」が必要ということになり、そのおかずを作っている業界に普段よりもはるかたくさんの金が投じられることになった。さすがの山口君もこの事態は予想してなかったという。普段通り月の売り上げをスマホで確認していたら、

あれ?なんか多いぞ。

ということになり確認したらそうなっていたという話である。

いずれにせよコロナで壊滅的被害を被る業界もあれば波に乗る業界もあるのだ。

このように東京の少年の男の子たちは、ただ富裕層に買われ、大金を「貰う」という働き方だけでなく、自分で金を稼ぐ「システムを考え作り出し」実際にやってみるというトライアンドエラーを果敢に繰り返している。「東京の娼年」は、彼ら有能な男の子たちが若いうちから資本主義に親しみ、自分で事業を興したり潰したりする練習の場を提供するという使命がある。

東京の娼年システムを創った理由④

現在東京の少年として具体的生産的経済活動を行っているメンバー数は、大学生卒業生合わせて70人となる。うちは「どんどん増やす」といった破廉恥な採用をしないので、新規採用は年間2−3人が限度。何故なら、デビュー前の教育に手間隙がかかるからだ。いくらインカレチャンピオンでも、いきなり富裕層の自宅に放り込まれては何もできない。

富裕層である顧客は、それぞれ勝手に考え、目論見、好きなように男の子を利用する。自分が気持ち良くなるために、男の子を利用するのだ。その利用代金が、1時間10万年15万円という金額である。

ところが、例えば山口君くらい優秀な男の子になると、顧客が「未体験の」気持ち良くなるプロトコルを、こっちが作って教えて差し上げるといった仕事をするようになる。このレヴェルになると1時間の単価は最低でも20万円を超えていく。

冗談でも何でもなく、その山口君は、顧客が「経験したことのない」センズリ(オナニー)の仕方を研究開発しては、それを教えて差し上げることで、引退直前の彼の1時間は25万円という値をつけていた。平均的な医師の1時間が1万円なので、彼は日本の医師の25倍の価値を持つ男の子ということになる。実際私もそう思う。

あなたは毎晩違うやり方で30日、確かに毎日違うやり方で精子を出すことができますか?