東京の娼年システムを創った理由①

精神科臨床医を始めてすぐ、統合失調症双極性障害など一部の「本格的精神疾患」は別にして、具合が悪いと訴え押し寄せる人々のほとんどは、昭和の(あるいはそれ以前からの)古い慣習や考え方に支配されているせいで今の現実に適応不全を起こしているに違いないと解った。

その慣習や考え方が「令和の今」のトレンドに合っていなければ、具合が悪くなるのも当然である。例えば石の上にも3年を適用した「どんな会社でも3年は勤めないと履歴書に傷がつく」という考え方とか。

要は受け取り方感じ方考え方の問題である。具合の悪くなりがちな人は、そこに問題がある。

おそらく患者をちゃんと診ている精神科医は全員、このことに気づいているだろう。そうすれば安易な薬物療法など行うはずがない、この手の人たちは何か薬をひとつふたつ飲んだからといって良くなるものではない。そもそも考え方を変更するような薬物など存在しないのだ。

そしてもうひとつ、彼らの具合が悪くなる理由が、時代の潮流(トレンド)に合わない働き方をしていることである。

時給1300円で10時間働き、日給13000円、1日10時間、週に5日月に20日働いて月給30万円を得るという「典型的な資本主義の搾取構造の効いた」働き方を、大多数の人が「それが普通と思い込み」自分の価値をまるっきり無視した無関係の無評価の仕事をやっている。

資本主義をちょっと勉強した人なら知っていると思うが、この時給1300円にしろ月給30万円にしろ、その数字は何の根拠もない数字である。強いて言えば、仕事の内容や頑張りなどとは全く無関係な、「なんとか生活し、子供を育て、自分を教育するに足る」金額なのだ。能力の高い者がめちゃくちゃ頑張ったからその分上乗せしていくら、ということが絶対にない「誰がどのように仕事しようが皆同じ」金額が時給1300円月給30万円なのである。

そんな働き方をしていれば具合が悪くなるのは当然である。しかし、彼らがそんな働き方をすぐ変更できない理由は、他の働き方があることを知らないし、あってもどのようにシフトしたら良いか、具体的な方法がわからないからだ。

東京の娼年システムは、そういう彼らに具体的指針を示すためにつくられたのである。