30分10万円の蜜室筋トレサービス

コロナパンデミックは人のライフスタイルをガラリと変えてしまいつつある。ウイルスは瞬く間に世界中に拡がり、東京が初の緊急事態宣言を発令してからたった1年しか経っていないが、人のライフスタイルには劇的な変化があった。そのひとつがスポーツクラブやジムの類だ。
まず富裕層が、いわゆる大衆ジムからプライベイトやパーソナルにあっさりシフトした。日常的に投資的感覚を磨く彼らは、こういう時の行動の選択は実に迅速である。そもそも彼らは、持ち上げる負荷や筋肉量を増やすのが目的のトレーニングというものに長いこと疑問を抱き辟易しつつも、なんとなくやり過ごしていた。大きくシフトチェンジする契機や理由が見つからなかっただけだった。
ところが唐突にコロナウイルスがその契機になった。
山口君はビジネスをサーフィンに例えている。波待ちの群からパッと抜け出し絶好の波を戴くには、自分の直感を信じて皆よりずっと早くにパドリングし始めねばならない。
山口君はコロナ襲来のずっと前から、富裕層が好みそうなアジト的建物を探し回り、スポンサーに金を出させては買取り、着々と、プライベイトジムスタジオを都内随所に準備していた。彼はコロナ襲来を予想していたわけではない。何が来るかわからないけれども「何か大きな波」が来たら即座に使おうと準備していたと言う。
そこに現れたのが奥村君だった。山口君が準備してきたプライベイトジムをうまく利用し、奥村君は富裕層女性特に「キャリア女性」を標的にした蜜室レッスンサービスを文字通り「あっという間に」開始した。実はその事業をやらせようと思っていた男の子が、奥村君以外に数人いたのだが、奥村君のスピードがあまりに速かったため、他の男の子にこの話が回ることはなかった。
彼は自分が大学ラグビー部員であることを何の言い訳にもしなかったのである。合宿があるからとか試合があるからとか、そういうことを理由に「責任ある仕事ができないかもしれない」などと言う甘えたことを一切言わず、「やります!」と言ってすぐに始めた。だから多くの東京の娼年の男の子たちを尻目に、一躍トップに躍り出ることに成功したのだ。
資本主義で勝組になる条件の一つが「迅速な行動化」である。奥村君だけがそれに相応しい速さで行動し、山口君が準備していた材料全てを譲り受けコロナの大波に乗ったのである。
30分10万円のサービスを奥村くんは1日に5本から10本こなす。2時間半から5時間で、50万から100万円稼ぐということである。1日で。
貧困層からすると考えられない金額かもしれないが、富裕層からすると安すぎるくらいである。実際、奥村君のレッスンを受けた私の友人の女医たちは「安すぎる、もっと高くして欲しい」と言っていたし、私もそう思う。