娼年デビューへの道⑥

東京の娼年の男の子は原則「体育会大学生」もしくは「卒業生」である。(種目は問わない)なので皆鍛えるのが好きで、いい体をしている。いい体というのは美味しそうな体という意味でもある。

「鍛えるのが好き」でないと娼年の仕事はできない。好きでなければ積極的にトレーニングしないし、さまざま工夫を凝らすこともしないからである。毎日必ず何らかのトレーニングを全員がしている。やらない理由を並べ、スマホを弄ったりゲームしているようなぐうたらは一人もいない。

面接からしばらくの間は、全員がトレーニング動画を教育担当者に送るのが義務付けられている。何故なら、得意なトレーニングで工夫を凝らした価値を生み出すことができない奴が、どうしてそれ以外の場面で積極的に工夫を凝らすことなどできるだろうか。

つまりトレーニング動画の質を見れば、富裕層がその男の子に凡そどれくらいの金額を支払うかがわかるのである。

今をときめく奥村君のデビュー前のトレーニング動画は秀逸すぎて、その動画自体が高い値段で買い取られるレヴェルだった。何故、それほどに秀逸だったか。奥村君は他の多くの男の子が作成する動画と違い、トレーニング中の「苦悶の表情」や「肌から吹き出す汗」にフォーカスした動画を作成したからである。奥村君を買おうと思う客が見たいのはどこなのか。トレーニング内容なのか、体なのか、表情なのか。彼はそこら辺を考えるうち、名案を思いついた。逆に、「苦悶の表情」や「体から吹き出す汗、滴る汗」を撮影することで、「そういう奥村」に興味を持つ客がどの層なのかを探る戦略に出たのだ。それが今大ヒット中の「キャリア女性をターゲットにした男奥村の激しすぎるトレーニング」である。

兎にも角にも、娼年は最も得意なはずのトレーニングをうまく商品やサービスとして料理できなければ話にならないということである。