恋愛で身を滅ぼす女①

高校時代の親友のひとり「サキ」がそういうタイプだった。恋愛することで具合が悪くなり、成績まで大きく落とす。しかもそれを東大受験のこれからって時にやってるから、親友として黙っていられなくなった。

あんた何してんの。大事な時期に。そんな体たらくになるんだったら彼氏と別れなよ!

きっと私は怖い顔をしていただろう。しかしもっと怖い顔をしていたのはサキの方だった。

あんたはいいよね。大学生の、それも、相撲部の男と付き合ってるんだもんね。そりゃ安心でしょうよ。

あんた、何言ってんの?その男と付き合って頭まで悪くなったんじゃないの。

ほっといてよ!私がどうなろうと他人の勝手でしょ。なんでそうぐちゃぐちゃ言ってくるわけ。結局あんたは私を見下して楽しんでるだけでしょ。本当に心配なんかしてない。うざいだけ。消えて。

彼女も負けず劣らず口が達者なタイプであることをとっくに知っていた私は引き下がった。悪いのは私だ。頭ごなしに叱り付け、話を聞こうともしなかった。反撃されても仕方がない。

ごめん。私が悪い。のっけから感情的になって、しかも否定までして。でも、見下してないし、心配しているのは本当。だってライバルが勝手に自滅してくれる方が受験には有利。でも、私はそんなふうに思ってない。

彼女の具合が悪かったのは、「結局あんたは私を見下して」の件でわかる。今ならばね。人は具合が悪くなると被害的になる。何でも悪い方に悪い方にと解釈するようになるのだ。

それくらいサキは恋愛に溺れ、溺死寸前だった。

相手の腹の中や心の内など、誰にも、どうしようもできないことくらい知っているのに、知っていなきゃ恋愛なんかしてはいけないのに、彼女はそのルールを守れなかったのだ。健全な恋愛ができるほど、彼女の自己肯定感は成熟していなかったということである。