精子取引。

東京の娼年は「金を有効に使いたがっている」富裕層への、男の子のデリバリーシステムである。私が後期研修を終え、精神科医として働き始めた頃に創業したのでもう6年になる。

これを始めた頃、未来の世界がコロナウィルスにより、こんな状況になるとは思いもしなかったが、巣ごもり消費を追い風にデリバリー系ビジネスは売上を伸ばし、ヒトのデリバリーである東京の娼年の売上も急増した。全く、未来というのは本当に予想がつかないものである。

精子を欲しがる富裕層が増えることはわかっていた。

他者と差をつけることが資本主義で勝つ戦略のひとつである以上、精子の時点から差をつけたいと考えるのは当然だろう。

ここら辺に関する法整備もズサンというか曖昧で、規制も曖昧である。もっとも曖昧にしておくことで、富裕層には自由にやっていただいて結構です、という意図があるのかもしれない。

医者の中にも積極的にプロトコルを創造している先生がいて、代理母を借りるという面倒な方法をとらず、精子提供者と自分の妻の性交渉を認めるという方法を採用し、方法そのものはエキセントリックだが、生物学的には自然な形で実行している。

精子提供者への報酬も規定がないぶんさまざまで、ここ数年で、億単位の報酬は珍しくなくなった。

東京の娼年システムの利益は、精子取引と後継者推薦の仲介料であり、男の子を紹介するのにいちいち手数料を取るといった面倒な真似はしていない。男の子は顧客から直で「車齢」としての報酬を貰うので、私は彼らが幾ら貰っているかの正確な数字を知らない。